猫の耳介裂傷(みみかいれっしょう)は、耳の外側(耳介)に生じる切り傷や裂け目のことです。耳は血流が豊富なため、小さな傷でも出血が目立ちやすく、飼い主が驚くケースは少なくありません。適切な応急処置と受診の判断ができれば、多くの場合は回復できます。この記事では、症状の見分け方・応急処置の手順・受診のタイミングをわかりやすく解説します。

耳介裂傷とは?

耳介とは、耳の外側にある軟骨に皮膚が覆いかぶさった部分のことです。猫の耳介は薄く、皮膚の下に軟骨と血管が密集しているため、ちょっとした引っかきや噛み傷でも深くまで達しやすく、出血しやすい構造になっています。

耳介裂傷は、耳の先端・縁・内側など場所を問わず発生しますが、特に耳の先端と耳の縁(外周)は薄くて傷つきやすいため、頻発しやすい部位です。放置すると感染症や耳血腫(ちけっしゅ)への移行リスクがあるため、早めの対処が大切です。

症状と重症度の見分け方

耳介裂傷は軽度から重度まで症状の幅が広く、重症度によって対応が変わります。以下を参考に、まず状態を確認してください。

軽度(自宅ケアで対応できるケース)

  • 出血がにじむ程度で、数分以内に止血できる
  • 傷が浅く、皮膚表面のみ
  • 猫が普段通り食事・排泄・遊びをしている
  • 耳を触っても強く嫌がらない

中度(早めの受診が望ましいケース)

  • 出血が10分以上続く、または何度も再発する
  • 傷が皮膚の深部まで達しているように見える
  • 耳の縁が裂けて、皮膚がめくれている
  • 猫が頭を激しく振り続けている
  • 傷の周囲が赤みを帯び、腫れが出始めている

重度(すぐに受診が必要なケース)

  • 出血が激しく、圧迫しても止まらない
  • 耳介の一部が大きく裂けている・ちぎれかけている
  • 耳が大きく腫れ上がっている(耳血腫の疑い)
  • 膿が出ている、または傷から異臭がする
  • 猫がぐったりしている・食欲がまったくない

主な原因

耳介裂傷が起きる原因には、以下のようなものがあります。

他の猫・動物との喧嘩

最も多い原因です。猫同士の喧嘩では、引っかきや噛みつきによって耳に裂傷が生じます。外出自由な猫や多頭飼いの猫に多く見られます。特に縄張り意識が強いオス猫は喧嘩になりやすく、耳の傷を繰り返すケースもあります。

外傷・事故

屋外での活動中に枝・フェンス・金属部品などに耳が引っかかり、裂傷が生じることがあります。室内でも、家具の隙間に耳が挟まったり、おもちゃの部品で傷つくケースがあります。

自傷(かきむしり)

耳ダニや外耳炎などで耳に強いかゆみがある場合、後ろ足で耳をかきむしって自分で傷つけてしまうことがあります。この場合、元の耳の病気の治療も同時に行う必要があります。

すぐに動物病院へ行くべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は、自宅ケアを行わずに速やかに動物病院を受診してください。

  • 出血が10〜15分の圧迫で止まらない
  • 傷が深い・皮膚がめくれている・裂け目が大きい
  • 耳全体が腫れている(耳血腫の可能性)
  • 膿・異臭・黒い分泌物がある(感染症の可能性)
  • 猫が耳を触らせない・ぐったりしている
  • 傷が2〜3日経っても改善しない・悪化している

耳介の傷は縫合が必要なケースもあります。「傷が小さいから大丈夫」と判断せず、迷ったら獣医師に相談するのが安心です。

自宅でできる応急処置(手順)

軽度の耳介裂傷で、受診するか迷っている間や、受診前の応急処置として以下の手順を参考にしてください。

ステップ1:まず猫を落ち着かせる

興奮した猫に無理に触ると噛まれる危険があります。静かな場所に移動し、声をかけながら落ち着かせましょう。タオルで体を包む(バーリトー法)と安全に保定できます。

ステップ2:清潔なガーゼで止血する

清潔なガーゼまたはティッシュを傷口に当て、やさしく5〜10分圧迫します。強く擦ると傷が広がるため、「押さえるだけ」を意識してください。出血が止まらない場合は受診してください。

ステップ3:傷口を消毒する

止血できたら、イソジン(ポビドンヨード)を水で10倍に薄めたものや、動物用消毒液で傷口を拭きます。アルコール消毒液は刺激が強く、猫の皮膚を傷めるため使用しないでください。

ステップ4:エリザベスカラーを装着する

消毒後、猫が傷口をかいたり舐めたりしないよう、エリザベスカラーを装着します。舐めることで感染リスクが上がるため、外出中・就寝中でも外さないようにしましょう。

ステップ5:傷の状態を毎日確認する

翌日以降も傷の状態を確認し、赤み・腫れ・膿・異臭が出てきた場合は感染の疑いがあるため、すぐに受診してください。軽度の傷であれば1週間前後で治癒することがほとんどです。

動物病院での治療

動物病院では、傷の状態に応じて以下の処置が行われます。

縫合処置

傷が深い場合や、皮膚が大きく裂けている場合は縫合が必要です。耳介の縫合は細かい作業が必要なため、全身麻酔または局所麻酔をかけた上で処置します。縫合後は抜糸まで(通常10〜14日)エリザベスカラーを着用します。

抗生物質・消炎剤の投与

感染予防・炎症を抑えるために、抗生物質や消炎剤が処方されることがあります。処方された薬は指示された期間しっかり飲ませることが大切です。自己判断で途中でやめると、耐性菌が生じるリスクがあります。

耳血腫の処置

頭を激しく振り続けた結果、耳介内に血液が溜まる「耳血腫」が起きることがあります。この場合、針で血液を抜く処置や、外科的ドレナージが必要になります。耳血腫は放置すると変形・萎縮が残るため、早期処置が重要です。

治療費の目安

耳介裂傷の治療費は傷の程度によって大きく異なります。あくまで目安として参考にしてください(保険適用外の場合)。

  • 診察・消毒のみ(軽度):3,000〜5,000円程度
  • 縫合処置(局所麻酔):10,000〜20,000円程度
  • 縫合処置(全身麻酔):30,000〜60,000円程度
  • 耳血腫の処置(穿刺):5,000〜15,000円程度
  • 耳血腫の手術:30,000〜80,000円程度

ペット保険に加入している場合は、縫合・手術費用の補償対象になることがあります。加入している保険の補償内容を事前に確認しておきましょう。

回復期間と経過観察のポイント

耳介裂傷の回復期間は、傷の深さと治療方法によって異なります。

  • 軽度(消毒のみ):5〜10日で治癒することが多い
  • 縫合あり:抜糸まで10〜14日、その後1〜2週間で完治
  • 感染を伴う場合:抗生物質の投与期間(2〜4週間)は経過を観察する

回復中に以下のサインが見られたら、受診または再受診してください。

  • 傷口が開いてきた・縫合が外れた
  • 傷の周囲が赤く腫れてきた・膿が出ている
  • 猫の食欲がない・元気がない状態が続いている

再発・感染を防ぐための予防策

完全室内飼育への移行

外出自由の猫は他の猫との喧嘩リスクが高く、耳介裂傷を繰り返しやすいです。安全管理の観点から、完全室内飼育を検討することをおすすめします。

多頭飼いの場合は相性と環境を整える

多頭飼いで喧嘩が起きやすい場合は、縄張りが重ならないようにスペースを増やす・キャットタワーや隠れ場所を増設するなど、猫同士のストレスを減らす環境づくりが有効です。

爪のケアを定期的に行う

爪が伸びていると引っかき傷が深くなります。月1〜2回の爪切りを習慣にすることで、傷の深さを軽減できます。

耳の定期チェックを行う

週に1回程度、耳の中をチェックする習慣をつけましょう。耳ダニや外耳炎が早期に発見できれば、かきむしりによる自傷を防ぐことができます。黒い耳垢・異臭・耳をしきりに掻く行動が見られたら獣医師に相談してください。

よくある質問

Q. 耳から少し血が出ているけど、すぐ病院に行くべき?

A. 出血が少量で5〜10分の圧迫で止まり、猫が普段通り過ごしているなら、まず自宅で応急処置を行い様子を見ても問題ありません。ただし、出血が続く・傷が深い・腫れがある場合は受診してください。

Q. 猫が頭を激しく振っているのはなぜ?

A. 耳の痛みや違和感があるときに猫は頭を振ります。この動作が続くと、遠心力で耳の血管が破れ「耳血腫」に発展することがあるため、エリザベスカラーで頭振りを制限しつつ早めに受診することをおすすめします。

Q. 消毒はアルコールでもいい?

A. アルコール消毒液は猫の皮膚に強い刺激を与えるため使用しないでください。薄めたイソジン(ポビドンヨード)か動物用の消毒薬を使用してください。何も手元にない場合は、生理食塩水または清潔な水道水で洗い流すだけでも構いません。

まとめ

猫の耳介裂傷は、適切な対処をすれば多くの場合回復できます。まず傷の重症度を確認し、軽度であれば止血・消毒・エリザベスカラーの装着で対応し、中度〜重度の場合は速やかに動物病院を受診してください。

回復後も、定期的な爪切りや耳チェック、室内飼育の検討など、再発を防ぐための環境整備を意識することが大切です。猫の耳の異変に気づいたら、早めに対処することで、重症化を防ぐことができます。

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