猫の脳腫瘍は、脳実質または脳を包む髄膜から発生する腫瘍です。10歳以上の高齢猫に多く見られ、てんかん発作・行動変化・視覚障害などを引き起こします。MRI検査が診断の標準法で、腫瘍の種類・部位・大きさによって治療方針が異なります。猫で最も多い原発性脳腫瘍は「髄膜腫」で、外科切除により長期生存が期待できるケースもあります。
目次
脳腫瘍とは?
脳腫瘍は、脳または髄膜(脳を包む膜)から発生する腫瘍です。原発性(脳そのものから発生)と転移性(他の臓器の腫瘍が脳に転移)に分けられます。
猫での主な脳腫瘍の種類:
- 髄膜腫(ずいまくしゅ):猫の原発性脳腫瘍の中で最も多い。脳を包む髄膜から発生し、比較的ゆっくり進行する。外科切除が有効なことが多い
- グリオーマ:脳実質から発生。犬に多いが猫にも見られる
- リンパ腫:全身性リンパ腫が脳に波及するケース
- 転移性腫瘍:肺・乳腺などの腫瘍が脳に転移したもの
主な症状
脳腫瘍の症状は、腫瘍の発生部位と大きさによって異なります。
神経症状
- てんかん発作(痙攣):最も多い症状。突然倒れて四肢をバタバタさせる
- 頭を押しつける行動(head pressing):壁や床に頭を押しつけている
- ぐるぐる回る(旋回行動):一方向にぐるぐると歩き回る
- 失調・ふらつき:まっすぐ歩けない、転びやすい
- 視覚障害:物にぶつかる、視線が合わないことがある
行動・性格の変化
- 急に攻撃的になる
- いつも通り認識できない様子(認知機能の低下)
- 食欲・飲水量の変化
- トイレを外す・失禁
- 呼びかけへの反応が鈍くなる
受診の目安
以下の場合はすぐに受診してください。
- 初めてのてんかん発作が起きた(緊急)
- 5分以上発作が続く(重積発作:生命の危険)
- 壁に頭を押しつけている
- 突然のふらつき・旋回・視覚障害
- 急激な性格・行動の変化(高齢猫)
診断方法
MRI検査(最も重要)
脳腫瘍の診断にはMRIが必須です。腫瘍の位置・大きさ・周囲への影響を詳細に確認できます。MRI検査には全身麻酔が必要で、二次診療施設(専門病院)での実施となります。
CT検査
MRIに比べて解像度は劣りますが、石灰化した髄膜腫の検出に有効です。MRIより利用しやすい施設が多いです。
脳脊髄液検査・血液検査
炎症性疾患との鑑別のために脳脊髄液を採取・検査することがあります。確定診断は生検(腫瘍組織の採取)が必要ですが、手術時に行われることが多いです。
治療方法
外科手術(開頭術)
髄膜腫など摘出可能な腫瘍には、開頭して腫瘍を切除する手術が行われます。猫の髄膜腫は人と同様に被膜があってまとまっていることが多く、完全切除できれば長期生存(2年以上)が期待できます。
放射線療法
手術が難しい部位の腫瘍や、術後の再発防止に放射線治療が用いられます。専門施設での実施となります。
内科療法(緩和・対症療法)
手術や放射線が難しい場合、または飼い主が積極的治療を望まない場合は以下の薬で症状を緩和します。
- コルチコステロイド(プレドニゾロンなど):脳浮腫を軽減し、症状を一時的に改善する
- 抗てんかん薬(フェノバルビタールなど):発作をコントロールする
- 利尿薬(マンニトールなど):脳圧を下げる
治療費の目安
- MRI検査:60,000〜120,000円程度
- 開頭手術:150,000〜400,000円程度
- 放射線治療(複数回):200,000〜500,000円程度
- 内科療法(薬代・通院):月10,000〜30,000円程度
自宅でのケアと注意点
- てんかん発作が起きたときの対処:発作中は猫を移動させず、周囲の危険物を除いて見守る。5分以上続く・繰り返す場合は緊急受診
- 段差や高所へのアクセスを制限:転倒・落下のリスクを減らす
- 発作の記録をつける:いつ・何分間・どんな症状かをメモしておくと診断に役立つ
- ストレスを避ける:静かで落ち着いた環境を整える
- 薬を毎日決まった時間に投与する:抗てんかん薬は急に中断すると発作が悪化することがある
予後
猫の髄膜腫は手術で完全切除できれば中央生存期間が2年以上というデータもあり、他の脳腫瘍と比べて予後が良好です。内科療法のみの場合は数ヶ月程度が中央生存期間となることが多いですが、個体差があります。緩和ケアによって快適な時間を延ばすことを目的とする選択肢もあります。
よくある質問
Q. 老猫が突然発作を起こした。脳腫瘍の可能性は?
A. 高齢猫の初めての発作は脳腫瘍が原因の場合がありますが、高血圧・腎臓病・低血糖なども原因になります。まず血液検査・血圧測定でスクリーニングし、異常がなければMRI検査を検討します。
Q. 手術を選択しない場合、どれくらい生きられる?
A. 内科療法のみの場合、コルチコステロイドで数週間〜数ヶ月症状が改善するケースもあります。腫瘍の種類・進行度・猫の全身状態によって大きく異なるため、担当獣医師と相談してください。
まとめ
猫の脳腫瘍は高齢猫に多く、てんかん発作・行動変化・ふらつきなどで気づくことが多い疾患です。初めての発作や急激な行動変化が見られたら早めに受診してください。診断にはMRIが必要ですが、猫の髄膜腫は手術で長期生存が期待できるケースがあります。積極的治療が難しい場合でも、内科療法で症状をコントロールしながら快適な生活を維持することが目標です。
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