猫風邪(上部気道感染症)は、主に猫ヘルペスウイルス(FHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)が引き起こす呼吸器感染症です。くしゃみ・鼻水・目やに・発熱が主な症状で、子猫・高齢猫・免疫力が低下している猫で重症化しやすいです。多頭飼育環境では感染が広がりやすく、ウイルスを保有したまま症状が出ない「キャリア猫」も多く存在します。
主な原因ウイルスの比較
| 病原体 | 割合 | 主な症状・特徴 |
|---|---|---|
| 猫ヘルペスウイルス(FHV-1) | 約40〜50% | ストレスで再活性化。角膜炎・結膜炎を起こしやすい。キャリア化する |
| 猫カリシウイルス(FCV) | 約40% | 口内炎・口腔内潰瘍を起こしやすい。変異しやすく毒力の強い株がある |
| クラミドフィラ・フェリス | 約10〜20% | 結膜炎を主体とする。細菌の一種で抗生物質(ドキシサイクリン等)が有効 |
主な症状
典型的な症状
- くしゃみ:連続してくしゃみが出る。初期に最も多い症状
- 鼻水:水っぽいものから黄緑色の膿様まで。鼻が詰まって鼻呼吸が困難になることがある
- 目やに・結膜炎:眼が充血・腫れる。目やにで眼が開きにくくなることがある
- 発熱・元気消失・食欲低下:特に子猫では急速に悪化することがある
- 口内炎・口腔内潰瘍(FCV):よだれが増える・食事を嫌がる
重篤化した場合(特に子猫・高齢猫で注意)
- 鼻が詰まって嗅覚が失われ、食欲廃絶・急激な体重減少
- 角膜潰瘍・失明(FHV-1による眼の炎症が進んだ場合)
- 肺炎への移行(二次細菌感染)
- 脱水・衰弱が急速に進む(特に乳子猫では命に関わる)
感染経路と広がり方
- 直接接触:鼻と鼻・グルーミングの共有
- 飛沫感染:くしゃみで1〜2m先まで飛散。同じ空間にいるだけで感染する可能性がある
- 間接接触:食器・おもちゃ・飼い主の手を介して伝播
FHV-1は感染後に三叉神経節に潜伏し、ストレス・免疫低下時に再活性化します。症状が治まってもキャリア状態が続くため、多頭飼育環境での管理が特に重要です。猫を新たに迎え入れる際は2週間程度の隔離期間を設けることが推奨されます。
治療方法
対症療法(基本)
- 点眼薬(抗ウイルス・抗菌):結膜炎・角膜炎の治療。ビダラビン・イドクスウリジン等の抗ウイルス点眼、抗菌点眼を使用
- 鼻の蒸気吸入:鼻詰まりを緩和し呼吸を楽にする
- 食欲刺激・強制給餌:嗅覚低下で食欲が落ちる場合、ウェットフードを37〜38℃に温めて匂いを立たせる
- 輸液(皮下または静脈):脱水・食欲不振が続く場合
二次感染に対する抗生物質
ウイルス感染自体には抗生物質は無効ですが、二次的な細菌感染が加わっている場合(黄緑色の膿様鼻水・高熱等)は抗生物質を使用します。クラミドフィラには抗生物質(ドキシサイクリン等)が有効です。
抗ウイルス薬(重症例・再発例)
FHV-1に対してはファムシクロビル(内服)が使用されることがあります。重症例・眼への影響が強い場合・再発を繰り返す場合に選択されます。L-リジン(サプリメント)もFHV-1の複製抑制に効果があるとされ、予防・補助療法として使用されます。
自宅でのケア
- 温かく蒸気を当てる:浴室に猫を連れ込んでシャワーの蒸気を10〜15分当てると鼻通りが改善する
- ウェットフードを温める:匂いが立ち食欲が出やすい。37〜38℃程度に温める
- 目やにを取る:ぬるま湯で湿らせたガーゼで目の外側から内側へ優しく拭き取る
- 安静・ストレス軽減:静かな暖かい場所でゆっくり休ませる
- 多頭飼育の場合は隔離:感染している猫は他の猫と分け、食器・トイレを共有しない
治療費の目安
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 初診・身体検査 | 1,500〜3,000円 |
| 内服薬・点眼薬(1〜2週間分) | 3,000〜8,000円 |
| PCR検査(ウイルス種の特定) | 5,000〜10,000円 |
| 点滴(重症・食欲廃絶時) | 5,000〜15,000円/回 |
予防:ワクチン接種
猫の3種混合ワクチン(コアワクチン)はFHV-1・FCV・猫パルボウイルスに対応しています。完全な予防はできませんが、感染時の重症化を大幅に防ぎます。子猫は生後8〜9週と12〜16週に2回接種し、成猫は1〜3年ごとにブースター接種を行います。屋外アクセスのある猫や多頭飼育環境では定期的なワクチン接種が特に重要です。
よくある質問
猫風邪は人にうつりますか?
猫の猫ヘルペスウイルス・カリシウイルスは人に感染しません。猫固有のウイルスです。ただし飼い主が別の猫に触れた後、手を洗わずに自宅の猫に触れると間接的にウイルスを媒介することがあるため注意が必要です。
完治後も再発しますか?
FHV-1は感染後に神経節に潜伏し、ストレス・免疫低下時に再活性化します。症状が治まってもキャリア状態が続きます。ストレスを減らす環境管理・L-リジンの継続投与・定期的なワクチン接種で再発頻度を下げることが大切です。
まとめ
- 猫風邪の主な原因はFHV-1とFCVの2種類のウイルス
- くしゃみ・鼻水・目やに・発熱が典型的な症状
- 子猫・高齢猫・免疫低下猫は重症化しやすいため早めの受診を
- 3種混合ワクチンで重症化を予防できる。定期的なブースター接種を忘れずに
- FHV-1はキャリア化するため、多頭飼育では新しい猫の隔離期間設定が重要